自己点検・評価活動を通じて明らかになった課題等に関する改善・強化の取り組みをいくつか紹介します。
自己点検・評価活動の拡充・強化
2019(令和元)年度に、内部質保証の推進に責任を負う全学的な組織として「内部質保証委員会」を新設する等、大幅な体制整備を行いました。そして、内部質保証の更なる推進のため、従来実施してきた自己点検・評価活動を点検・評価し、順次拡充・強化を図っています。
実施した拡充・強化の例
- 教育活動の有効性評価のための方針と要領の整備(教学アセスメント・ポリシー)
- 全学の教育目標および卒業の認定に関する方針(ディプロマ・ポリシー)により即した点検・評価の実施(「教育推進活動」の自己点検・評価)
- 学習成果の評価指標の開発・運用(教育目標に基づく到達度調査)
- 卒業生を対象とした調査の実施(アンケート調査・インタビュー調査)
- FD活動に関する全学的な自己点検・評価体制の構築(FD活動の自己点検・評価)
- 卒業研究等の評価指標の開発・運用(本項後段で詳述) 等
人的交流機会の創出
コロナ禍以降(2020年度~)に実施した教育目標に基づく到達度調査の結果から、コロナ禍で入学した在学生の、「主体性」や「表現力」「論理的思考力」といった特定の資質・能力の自己効力感が阻害されている傾向が見て取れました。
これを受け、内部質保証の推進に責任を負う全学的な組織(内部質保証委員会)では、以下のとおり、その主たる原因を「コロナ禍で他者との交流機会が減少したこと」と捉え、対策を検討し、学内各組織での展開を促しました。
交流機会減少との関係について
- コロナ禍に入学した1・2回生は制限された大学生活しか経験できておらず、必然的に他者との交流機会が少なくなり、学生同士、教職員との繋がりが希薄になっていると考えられる。
- 例えば、同級生等と切磋琢磨しながら学ぶ経験が乏しいためか、例年よりも学生間の学力差が大きいように感じられるとの声もある。これは、調査の結果判明した、特定の資質・能力に関する自己効力感の二極化傾向と符合する。
- 学園祭等の学内行事は、単なるレクリエーションイベントではなく、各種資質・能力を養う機会にもなっていたと考えられる。
- 卒業生を対象としたアンケート調査では、本学の長所として人的交流の充実を挙げた者が多かった。また、同調査からは、「教職員への親近感」や「協働性の修得実感」が、卒業満足度と相関が大きいことが判っている。このような本学の特長が、交流機会の減少により損なわれてしまう危険もある。
上記を踏まえた対策について
- コロナ禍の2年間で喪失してしまった人的交流をリカバリーするために、感染拡大状況に留意しながらも何らかの仕掛けが必要である。
- 具体的には、各種学内行事の再開・新設、クラスやゼミ単位での交流機会の新設、交流スペースの拡充等を行う。
以上を受け、2022(令和4)年度には、新入生向け部活動・サークル紹介イベントの再開や、交流スペースの新設・改修等を行いました。
なお、このような正課外活動への働きかけだけでなく、後段の「学生参加型授業の全学的展開」のように、正課内でも改善・強化を図っています。
ウッド調デッキを設けテーブルセットを配置
隔日でキッチンカーを呼び交流機会を創出
改修した学生ラウンジ
学生ラウンジでの1コマ
学生参加型授業の全学的展開
2022(令和4)年度から、本学は授業改革に取り組んでいます。
本改革では、学生参加型授業を全学的に展開することにより、全学の教育目標である「自立心・対話力・創造性」に涵養をさらに進展させることを目的としています(授業改革の概要 [PDF:452KB])。
本改革の実行は、必ずしも特定の自己点検・評価活動の結果に基づくものではなく、教育目標の達成を企図した総合的な判断によるものですが、自己点検・評価で明らかになった各種課題が、改革を通じて解決されることが期待されます。
例えば、学生参加型授業の展開を通じて、上で課題として取り上げた「主体性」、「表現力」、「論理的思考力」といった資質・能力のリカバリーが期待できます。
なお、改革諸施策の実行と並行して、自己点検・評価活動の一環としてその成果検証にも取り組んでいます(検証結果は今後公開予定です)。
卒業研究等の評価指標の開発・運用
本学は、全ての学部・学科で卒業論文あるいはそれに類する成果物の作成を課しており、学びの特長の一つになっています。そして、「4年間の学びの集大成」ともいえるこれらの教育プログラムを経て、学生の自己効力感が伸長することを確認しています(教育目標に基づく到達度調査)。
ただし、このように学習成果は確認されていたものの、各学科・担当教員に評価基準が委ねられていたため、全学の教育目標に照らした学習成果の指標として用いるのには難がありました。また、学生の立場からしても、シラバスに大まかな成績評価基準は書かれているものの、具体的にどのような観点でどのような水準が求められているのかが不透明である恐れがありました。そこで、あらかじめ明文化された共通の指標を設けて評価を行うことにしました。
具体的には、各学科で以下の条件を満たす明文化された指標を作成することとした上で、内部質保証の推進に責任を負う全学的な組織(内部質保証委員会)が指標のモデルを作成し、各学科での展開を支援しています。
- 学科の総括的な学習プログラム(卒業研究等)に対する評価指標であること。
- 定量的な指標であること。
- 学科のディプロマ・ポリシーだけでなく、全学の教育目標(本学学生の一般的傾向として、卒業研究等を通じて特に伸長することが確認された「主体性」、「表現力」、「論理的思考力」、「問題発見力」、「計画・実行力」の5つの資質・能力)とも対応していること。
- 上の対応関係を踏まえて、評価項目が相応に細分化されていること。
- 評価の客観性が確認できること。具体的には、評価者による評価のばらつきが抑えられるような設計になっていること(ルーブリックにより評価基準が具体的に記述されている等)、または評価基準を統一するための仕組みが伴っていること(評価に際して学科全体で協議を行い、評価者による評価のばらつきを調整している等)。
- 評価の視点や基準が具体的に明示されており、最終的な評価(成績評価)だけでなく途中の評価(改善のための指導、フィードバック)にも用いられること。
この取り組みは、コロナ禍による議論の中断を経て、2022(令和4)年度から開始しています。今後は、実際の運用を踏まえながら必要な改良を行っていく予定です。
共通英語カリキュラムの改善
卒業生アンケート調査の結果から、外国語運用能力の修得実感が低いことが確認されました。また、必要に感じる度合とのギャップも大きく、カリキュラム上の課題となっています。
専門科目として外国語を学ぶ学科の卒業生は修得実感が高いことと、全学生が共通して学習する(授業を履修する)言語が英語であることから、全学共通教養科目の英語カリキュラムに課題があると考え、改善の取り組みを行っています。
具体的には、全学共通教養科目を所管する全学共通教育部が、「教育推進活動」の一環として改善に取り組んでおり、現在は能力別クラス編成を適切に行うための仕組みや、学習成果の検証に必要な指標の開発について議論しています。